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父の癌とせん妄の症状と期間、その時、家族にできること、できなかったこと

2017年5月9日

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1月に父が病に倒れ、救急で病院へ搬送されました。

結果、癌(小細胞肺がん)が判明し、余命宣告もうけ、その事実にも心が動揺しましたが、それ以上に入院中の父の様子に心が動揺しました。

どうしたのだろう?

癌ってこんな風になるの?

こんなに人格が変わるの?

入院後の父はわたしの知っている父ではありませんでした。在りし日の父の人格はどんどんと失われていき、どんどんとおかしくなっていきました。

※今回は父の場合の話です。個々によって症状は異なる可能性があることをお断りしておきます。

父の人格急変、コロコロと変わる診断名

癌は早くに診断されました。

それ以上にわたしは父の心が、脳が、人格が失われていく驚きと恐怖、戸惑い、不安、怒り、悲しみなどに心を支配されました。

入院後、父に起こった人格急変、暴れる、妄想などは何からくるのか、診断名が変遷しました。

  • 低ナトリウム血症
  • うつ病
  • 傍腫瘍性神経症候群
  • せん妄

結果、最終的に診断名が「せん妄」で落ち着いた頃、父の精神も落ち着きを見せ始めました。

現在の父はほぼ以前の父です。ほぼ、というのはやはり一部異なるところがある、ということ。

家族にしか分からない微妙な違和感がありますが、この1月から2月の父の姿を思い出すと奇跡的な復活に見えます。

それほどせん妄は怖い症状でした。

そもそも、「せん妄」とは何か?

わたしの拙い説明よりも 公益財団法人長寿科学振興財団 より抜粋します。

せん妄とは、時間や場所が急にわからなくなる見当識障害から始まる場合が多く、注意力や思考力が低下して様々な症状を引き起こします。通常は継続しても数日間ですが、まれに数ヵ月間続く場合もあり、的確な処置が行えないと昏睡や死に至ることもあります。1日の中でも症状の強弱があり、夕方に悪化する傾向がみられます。

せん妄の症状は多岐に渡ります。上記のページを参考に紹介しますと・・・

  • 睡眠-覚醒リズムの障害 [父]睡眠リズムが狂いました。
  • 幻覚・妄想 [父]つじつまの合わないことを言い出し、見えないものが見えるように。幽霊(?)や超自然的な存在、亡きご先祖様など。
  • 見当識・記憶障害 [父]記憶が飛ぶことがよくありました。
  • 情動・気分の障害 [父]人格の急変。非理性的、わがままに。
  • 不随意運動などの神経症状 [父]字も書けない、タブレット操作もできなくなりました。

これらの症状は各疾患や加齢、薬、入院・手術により引き起こされるそうです。特に術後のせん妄症状はよくあるそうです。

そして、せん妄は数時間で収まる場合もあれば、数日、数週間で収まる場合もあるそう。

が、わたしの父の場合は2ヶ月続きました。

救急車での搬送、入院、そして、今思うとその後の薬や治療によりせん妄が激しくなったように思います。

1月~2月、癌よりもせん妄に振り回される日々

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1月のはじめに救急車で搬送されました。

搬送されたその日に病院へ駆けつけました。正直、その時にみた父も「ちょっとおかしいかな」と思いましたが、救急車で搬送されたので父も動揺しているのだろう、と判断していました。

検査を行い、病の原因を特定するためにしばらく入院することに。そこから坂道を転げ落ちていくように父は変わっていきました。

結果として、わたしは父の人格が失われていく過程をまざまざと見る結果に。

父が入院した病院は我が家から非常に近いものでした。家族の中ではわたしが一番近く、しかもフリーランスという自由のきく身。そのため、わたしはしょっちゅう病院へ通っていました。

日を追うごとに父の意識は明らかに「おかしく」なり、妄想や幻覚が生じ、つじつまのあわないことを言い、同時に夜中に徘徊、そして、衝動的に暴れるようになり、「死にたい」というメモを書くようになり・・・

特に衝撃を受けたのは意味の分からないことを言い出したことでした。

わたしたちには見えないものが見える、以前の父ならばそんなことは絶対に言いませんでしたし、とにかく混乱しました。

わたしたち家族はただただ混乱しました。

なんだろう、この症状はなんだろう?お父さんはこんなことをする人じゃなかった。あんなに理性的だったお父さんが。癌になったらこうなるのだろうか?癌は脳に転移をしたのか?

この頃のわたしは父のあまりにも急速な変貌ぶりに心がついていかず、よく泣いていました。泣くことしかできませんでした。

わたしは認知症を疑いましたが、医者ははっきりと違う、と断言を。精神科へも通いましたが、父が暴れるのでそれもなかなか難しくなりました。

そこからせん妄という診断にたどり着くまで長かったもの。

わたしたち家族にできたこと、ただベッドに付き添うだけの日々

父の癌は消すことは極めて難しい、と言われましたが、進行を抑えるために抗がん剤ないし放射線治療をする必要がありました。

が、父の容態ではそれらの治療は極めて難しい、と告げられました。

どうしたらいいのか分かりません。病院側もとりあえず父をおとなしくさせることだけに四苦八苦している様子でした。

食事もとれず、病院のベッドに拘束されている父を見る日々が続きました。点滴が常に体に刺さっていました。この頃になると父とコミュニケーションをとることも難しくなっていました。わたしたち家族は時折、目覚める父に水を含ませ、体を拭くぐらいでした。それ以外、何もできなかった・・・!

このまま父は理性を、意識を取り戻さないままに死を迎えるのか、と思いました。こんなにも不安と恐怖に支配されたまま、父は死にゆくのか、と。

そして、それとほぼ同じくして終末期医療の話が病院から出てきて、家族も覚悟を決めました。わたしたち家族にとって涙はすべて流した瞬間でした。

そんな時でした。

「せん妄だ」と診断されました。

転院後、父のせん妄症状はみるみるうちに消えていく

積極的な治療のために転院することになりました。

そこで個室に入り、癌の治療に入る前、寝たきりだった体を動かすリハビリに励みだすと父はみるみるうちに落ち着きを取り戻しました。

それは驚きの変貌でした。

わたしはもちろん、家族は皆いちように驚きました。だって、転院後、1週間もすると以前の父に戻ったように。体はまだまだ思うように動かせませんが、脳はしっかりとしてきました。受け答えも明瞭になりました。

思えば、転院前から少しずつマシになっていたように思います。

あの頃は「転院で父がますますおかしくなったらどうしよう、今後、どうなるんだろう」という大きな不安しかなく、父の細かい変化を見落としていたかもしれません。

わたしの中で、2ヶ月続いた父のせん妄は少しずつ消えていた → 転院し、個室に入り、静かな環境になったことにより父はより落ち着きを取り戻したのだと解釈しています。

事実、転院後もせん妄のための薬とか治療は何もしていない、とおっしゃっていました。そして、せん妄の症状が落ち着いた父は癌の治療に入りました。

ただ、やはり入院する前の父とは少し異なります。でも、せん妄に悩まされていた頃に比べると遥かに父らしくて安堵しています。

そして、父は自分がせん妄に振り回されていた頃のことをほとんど覚えていません。

管理人
自分がどんな状態だったのかも覚えていません。以前、入院していた病院の記憶もほとんどありませんでした。

何故、父のせん妄は急速に消えたのか

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何故、父のせん妄は急速に消えたのか。

わたしが思っているのは以下。

  • 消える時期だった。
  • 転院により個室に移った。環境の変化。
  • 体を動かすリハビリがはじまった。

の3点かな、と思います。

今思うと父は初めに救急車で運ばれた病院でいろいろと不安があったのでしょう。そして、体内の物理的作用もあるでしょう。それらが複雑に絡み合った結果として、せん妄症状が出てきて、長引いてしまった、と。

今回のことで、わたしはせん妄を知りました。学びました。

その中で感じたことはせん妄症状が出ている人は非常に強い「不安感」や「恐怖」に襲われているように感じました。それは必ずしも病のことだけではなく、ありとあらゆることに不安感や恐怖を抱いているように。家族のこと、仕事のこと、家のこと、遺産のこと、病院のこと、日本のこと、過去のこと、先祖のこと。すべてが父を悩ませる存在でした。

家族としてはそれを受け流すのではなく、受け止めるでもなく、肯定するでもなく、ただただ事実として受け止めることが唯一の道かな、と思います。なかなか難しいですが、それしかできないような気がします。それ以外は何もできません。否定をすると患者がますます不安と混乱に襲われます。

どうぞ、ご家族がせん妄と診断されても慌てないでください。

せん妄ならいつか、夢から醒めるように理性を取り戻します。驚くほど急速に。少なくとも父は急速に理性を取り戻しました。

この記事がどなたかの役に立ちますように。

2018年8月追記

「3か月という余命宣告は何だったのだろう?」というほど、父は元気に畑作業をしています。

そう、現在の父にはせん妄の症状のかけらもありません。そして、今なお、父は自分がせん妄に振り回されたことを知りません。

もう、それでいいと思うのです。

ワタノユキ

マイペースに生きる主婦 & 在宅ワークの日々(since20141003)。理想と現実の狭間を永遠に彷徨い中。 詳細なプロフィールはこちらにて。 わたしらしく年齢を重ねる もよろしく♡

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