コロナ禍により無意識のうちに心の余裕をなくしているのだろうか、と感じさせることがありました。
マスクやアルコール消毒、体温計などが不足していたあの頃、わたしは薬局にいました。
土曜日の夕方、こんな奈良の田舎でもレジ前は大行列。
レジから化粧品コーナー、そして、ヘアケアコーナーまでずらりと並んでいました。
わたしの前に並ぶのは高齢の男性。やや落ち着きのない動き、というか、明らかにイライラしているのが分かりました。なぜならその高齢の男性の前に並んでいる若い女性がスマホに向かって話しながら、並んでいたからだろうと思われます。行列の中、その若い女性の声はかなり響いて聞こえました。
一方、わたしの後ろには若いカップル。
この二人のひそひそ話も同時に聞こえてきます。が、こちらはさほど気になりませんでした。それよりも問題はスマホに向かって話している若い女性です。
彼女の話している内容はともかくとして、スマホで話しながら、ふらふらと体を揺らしていました。かなり揺れていました。話に夢中になるあまり、周囲が見えていない様子でした。結果、時折、行列から離れるように見えるほど揺れており、正直、わたしもイラっとさせられました。
が、わたしは自分のスマホに集中して意識を飛ばしていました。
若い女性に対して高齢の男性が怒声を浴びせる
その時、ふいに高齢の男性の怒鳴り声が聞こえました。それに対して、「え、そこはわたしが並んでいた場所ですよ!」と若い女性が訴えます。
どうやら、電話を終えた若い女性がようやく自分の状況に気づいたようです。
電話に夢中になるあまり、自分が行列の並びから外れていたこと。そして、その間に高齢の男性が行列を詰め、自分の並んでいると思い込んでいた場所がなくなったこと。
「え、でも、そこはわたしが並んでいた場所ですよ!」
と訴えると高齢の男性はますます激昂します。
「なんやねん、そっちこそ電話しながらふらふらしやがって…!!!並んでいるときはきちんと並べや!!!」
と怒鳴りつけます。
が、それに対して相手する若い女性も負けていない。
「はぁ~!?何いちゃもんつけてんねん」
並ぶ順序を変えたが、怒り収まらない高齢の男性
が、「ここでそんなどうでもいい争いをするなや」と思ったわたしは場を収めるために若い女の子をわたしの前に並ばせました。
つまり…
スマホ片手に揺れる若い女性、高齢の男性、わたし、カップル
という並びだったのを
高齢の男性、スマホを片手に揺れる若い女性、わたし、カップル
と変更。とりあえず高齢の男性から姿が見えなくなればいいのだろう、と女性を高齢の男性の後ろに挟みました。
が、高齢の男性は納得しておらず、やおら後ろに振り向き、またもや暴言を吐きます。
加えて腕を振り上げ、威嚇のポーズを見せてきます。実際、こんな田舎の薬局で高齢の男性が女性を殴るとは思いませんでしたが、この時になると若い女性は明らかに委縮しはじめていました。
それを見て、とっさにわたしはスマホを耳にあてながら「警察を呼びますね」と二人に告げました。
すると高齢の男性は「なんやてー!!」と怒鳴ってきましたが、その時は既に一通り怒鳴り冷静になったのか「なんで呼ぶねん、こんなしょーもないことで警察を呼ぶ必要あらへんやろ、分かったな」としぶしぶ前を向きました。
まぁ記憶は曖昧ですが、概ねこんな流れでした。
「警察を呼びますね」
人生で初めて使いました。第三者に対して初めて使いました。
奈良の田舎で平和的に住むわたしが使う言葉とは思えませんでした。使うとしても交通事故のシーンしかないだろうと思っていたセリフをこんな週末の明るい薬局で使うとは夢にも思っていませんでした。
なお、店員さんは混雑する客の対応におわれており、誰も登場しませんでいた…
コロナ禍で心の余裕をなくしている事実
今振り返ってみると、あの時は皆、コロナ禍において精神に余裕がなかったのかもしれません。
確かに若い女性はふらふらと揺れて電話をしていました。
が、普段なら高齢の男性も内心「怒」と思いながらも表面上は平静を保っていたかもしれません。
また、わたしも普段なら目の前で争いが起ころうとも「警察を呼びますね」というよりも店員さんを呼びます。
3人が3人ともに心の余裕をなくしていたのではないか、と。
こんな言い合いでいちいち警察を呼ぶのもどうかと思っているんですが、実際はどうなんでしょうかね?呼んだ方が収まりがつくのでしょうか…?
ともあれ、レジで精算を済ませた後、店を出る際になんだかどっと疲れを覚えたものです…