隣の席の会話が好きです。
いえ、正確には隣の席の会話を聞くのがおもしろいのです。
現在、在宅でもくもくと作業をしているわたしはたまに外へ出かけて、カフェやファミレスを梯子しながらノマドワークや読書、手帳タイムを設けるのが好きです。
それがコロナ禍で一変しました。
カフェやファミレスに出かける機会が一気に減り、何よりも集団で会話をする人もいなくなり。そう、わたしの密かな楽しみ、隣の席の会話を聞く機会がめっきりと減り、ひそかに寂しく思っていました。
が、先日、実に久しぶりに隣の席の会話に心躍ったものです。
なんていうか、隣の席の会話は変化に乏しい平凡なわたしの生活において重要なスパイス的な存在なのだ、と気付くことに。
マダームな会話会
自慢なのか愚痴なのか不満なのか、
褒められているのかけなされているのか、
おだてられているのか馬鹿にされているのか、
笑っているのか怒っているのか、
よく分からない会話の連続だったぞ…ピカピカに研ぎ澄まされた刃の応酬の見事さ…
隣の席でゾクゾク…真夏のホラー…
— ワタノユキ@8月もネットショッピングは減らす (@Watano_Yuki) August 24, 2020
隣の席の会話との出会いは究極の一期一会
一期一会
一生に一度だけの機会。生涯に一度限りであること。生涯に一回しかないと考えて、そのことに専念する意。
隣の席の会話を盗み聞きするのが好き。。。
とはなかなか大っぴらに言える趣味ではありません。盗み聞きと何が違うのか?と考えた時期もあります。が、隣の席の会話というのは公共のスペースで第三者に聞かれることを想定して行われている訳(に違いない)。
ま、ともあれ、隣の席の会話との出会いは本当に唐突に襲い掛かってきて、唐突に去っていきます。
「え、ちょい待て…!その話の続きを是非とも…!」
と思う瞬間に断ち切られる辛さとジレンマ。
でもまぁだからこそ、その後、わたしの中で妄想が果てしなく広がり、収拾がつかなくなります。
それだけにたまたま座った隣の席の会話がわたしの心にクリティカルヒットすると静かに喝さいの雄たけびをあげます。
これぞ、究極の一期一会よね、と一人にんまりと。
まぁわたしと関わりのない人の人生の一つの瞬間を完全な傍観者として覗き込む、触れる瞬間というのはたまらないほどゾクゾクします。
記憶に残っている隣の席の会話
必ずしも隣の席の会話ではありませんが、隣の席に通じる場面ということでニュアンスを感じ取ってください。
お見合い現場
20代の初め、大阪市内にあるホテルで待ち合わせに早めに到着したわたしはホテルのレストランに入り、カップルの隣に座りました。
コーヒーを飲みながら資料を確認していたのですが、どうにもこうにも隣の席の会話に耳がダンボに。実はこれが初めて遭遇したお見合い現場だったような気がします。
「おおーこれがお見合いか!」
とうら若き乙女としては興味津々でちらちらと眺めました。
会話の内容はもうはっきりと覚えていないのですが、女性の冷めた様子、男性の緊張している様子が如実に伝わってきて、「多分、この二人はダメだな…」と直感で感じ取りましたが実際はどうだったのでしょうか。
その後、何度かお見合い現場に遭遇しましたが、最近、面白いのは中高年のお見合いかなぁ、と思っています…若い子よりも直裁的で興味津々ですね。
不倫現場
ランチに入ったお店で隣に座ったサラリーマンっぽいおじさんと参観日に出かけるみたいな恰好をした妙齢の女性。
ぱっと見、夫婦に見えるので初めはまったく気にしていませんでしたが、何やら会話の内容が不穏な方向に…。
ちょいちょい挟み込まれるキーワード、久しぶり、最近どう?、夫、子ども、時間は何時まで、夕食の準備…「あ、こりゃ不倫だわ」とまじまじと二人の顔を眺めたものです。
普通のおじさんとおばさんでした。
そうか、こういう人が不倫をするのか、と20代後半のOLは妙に達観しました。
これとは別にママ友グループ内の不倫の話も面白かったですね。
まるでトロフィーを自慢するかのように不倫経験の話をしているのが新鮮でした。え、ママ友のグループこえー…と思って眺めたものです…
キャバ嬢の同伴
仕事帰りの屋台ラーメン。
いかにもお水のお姉さんと妙齢の男性がご来店。
観た瞬間に、「あ、同伴だ」という認識したのですが、ここは屋台のラーメンだよ…ここに同伴?と妙にびっくりした記憶が残っています。
出勤前にラーメン…
妙に生々しくお姉さんとの生活の違いを感じたりもしました。
派手なメイクをした、でも、意外とかわいい顔立ちをしたお姉さんのかすれたハスキーボイスが記憶に残っています。
母と娘と孫と保険金と
子どもを連れた娘と母の会話。
登場するのは父死去と保険金、家の改装、近所の人の愚痴。
生々しかったのは保険金の話。母が保険金を手に入れるためにいかに苦労したか、という話。保険金に入るに至ったいきさつや払い続けた苦労、ようやく手に入った喜びなどを語られており、興味津々でした。
ただ、内容が内容だけに隣のわたしに気づいた瞬間、会話の内容がトーンダウンしたのは残念でした…
母は強がっていたけれど、実際のところは夫が亡くなって寂しいんだろうな…そうであってほしい、と感じさせる内容でしたことよ…
マルチの勧誘
これも多いですね。実はわたしもファミレスでマルチの勧誘を受けた過去があります。。。
参考20代の頃、お金で痛い目にあったかもしれない怖い思いをしたお話、お金で感じた痛みや恐怖はお金を守る
若い子や主婦がマルチの勧誘を受けている現場もヒヤリとするのですが、まぁ、その年なら人生のやり直しもきくかもしれないね、と傍観。
それよりも「…」と思うのは高齢者向けの勧誘ですね。
平日の朝、近所のファミレスにて。マルチではなくとある金融商品の勧誘ですが、どう考えてもハイリスクハイリターン。隣の席で会話を聞きながら、ネットで調べると案の定、良い口コミも出てこない…おじいさんは乗り気なのかどうか釈然としがたいが、営業マンの勢いに押されているのが見える…
おじいさんとわたしの父の姿とかぶり「このままではだめだ!」と思うものの、口を挟む勇気はなく。
そこで、わたしはなぜかやたらとキーボードをたたく音を大きくしたり、グラスをがしゃんと置いたり、カバンの中をガサゴソして気をそらせる作戦に出ましたが何らかの効果があったのでしょうか…その後が不安です。
OL二人の仕事の愚痴
仕事の愚痴の話。
1人はOL、もう一人は接客業でこの日は久しぶりに会った、と。
お互いの業種の違いによる愚痴のずれとか悩みがリアルに浮き上がってきました。
OLは会社の仕事の単調さ、職場環境のイケてなさ、未来がない、と話をすれば接客業は客の横暴さ、勤務時間の長さ、意外と体力仕事である疲れ…
この二人に共通していたのは給料の安さ。
割と大っぴらに手取り額を開示されていたのですが、本当に安いな…と感じました。特に事務職のOLは正社員といえど安いところは安いんだな…と。
仕事の愚痴に関しては割とよく聞きますが、比較的最近ではこの若い二人の話が新鮮でした。
クリスマスのスタバで一人ガラケー
独身時代にクリスマスで街が浮かれている中、女友達とスタバで会話を。
長居をする中、自然と斜め前に座っていた一人の女性が目に入りました。彼女は誰とも話さず、コーヒーも飲まず、ずっとガラケーを触っていました。
仕事帰りのOL、という風情でしたが、途中でハンカチで目頭を押さえていたのが今でも記憶に残っています。
目の前に座っている女友達と「ああ…」と妙にしんみりとしたことも鮮やかな記憶。
隣の席の会話
隣の席の会話を通して、誰かの人生の一面にすっと潜り込み、スッと去っていく。
わたしは隣の席の会話に耳をそばだて、他人の人生を垣間見せてもらいました。
そして、これからも一人でカフェやファミレスなどで過ごす時間を楽しみたいと思います。