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感想『五匹の子豚』BBC制作のドラマが秀逸、夫と妻、そして、夫の愛人が一つ屋根の下に一緒に住んだら?

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英国BBC制作のドラマ、アガサ・クリスティーの『五匹の子豚』を観ました。

原作を読んで内容を知ってはいたのですが、わたしの中で印象には残らない作品でした。が、BBCで制作されたドラマは胸に訴える出来栄えでしたことよ・・・!素晴らしい出来で思わず原作を読み返したものです。

一人の男と二人の女。

気性の激しい正妻と年若く美しく傲慢な愛人。そして、奔放で才能あふれる画家の男。クリスティーお得意の三角関係。

ドラマはそれぞれの役を役者さんが忠実に演じており、臨場感と緊迫感あふれる出来栄えでした。

そうか、『五匹の子豚』はこんなストーリーだったのか、と改めて感動させられました。

原作。

BBC制作のドラマ。

アガサ・クリスティー『五匹の子豚』1942年

五匹の子豚

現代『 Five Little Pigs 』。1942年作。クリスティーが名作をバンバンと出版していた、黄金期に書かれた作品。

あらすじ

「母は父を殺していません。母の無実を明らかにしていただきたいのです」

16年前(BBC版では14年前)、カーラ(BBC版ではルーシー・クレイル)の母親は夫を毒殺した罪で有罪となり、1年後に獄中で病死した(BBC版では絞首刑)。

当時5歳だったカーラに事件の記憶はほとんどない。ただ、自分は無実であると書かれた母の手紙が残されているだけ。両親の事件の真相を知りたい娘カーラの心情に心動かされたポアロは誰もが「有罪判決に間違いはない」と口をそろえる過去の殺人事件の真相に挑む。

カーラの父、著名な画家であるアミアス・クレイルは結婚しているにも関わらず、華やかな女性遍歴を繰り返し、事件当時は若く美しい資産家令嬢の娘エルサを自宅に招き、彼女をモデルに絵の制作を行っていた。

傲慢な娘エルサはアミアスとの結婚を宣言し、アミアス、妻カロリン(キャロライン)、エルサの間に緊張が高まっていく。

その時に事件は起こった。

庭でエルサにポーズをとらせて絵を描いていたアミアスが毒殺され、妻カロリンが逮捕されたのだ。

五匹の子豚とは?

英国の童謡、マザーグースの「五匹の子豚」に由来しています。

本作品では過去を振り返る、主要な登場人物5人が五匹の子豚にたとえられています。

BBC版の登場人物

翻訳の関係もあろうかと思いますが、手持ちの本と登場人物の名前が一部異なります。

  • エルキュール・ポアロ(探偵) デビッド・スーシェ
  • キャロライン・クレイル(アミアスの妻であり逮捕された人) レイチェル・スターリング
  • アミアス・クレイル(画家) エイダン・ギレン
  • フィリップ・ブレイク(アミアスの親友) トビー・スティーブンス ※子豚
  • メレディス・ブレイク(フィリップの兄) マーク・ウォーレン ※子豚
  • ルーシー・クレイル(アミアスとキャロラインの娘) エイミー・マリンズ
  • エルサ・グリヤー(若い美女、資産家令嬢) ジュリー・コックス ※子豚
  • ミス・ウィリアムズ(アンジェラの家庭教師) ジェマ・ジョーンズ ※子豚
  • アンジェラ・ウォーレン(キャロラインの妹) ソフィー・ウィンクルマン ※子豚
  • ディプリーチ(キャロラインの弁護士) パトリック・マラハイド

さて、以下はネタバレあります。真相が分かりますので、読んでいない人はここでカムバックをお願いします!

夫と妻、そして、夫の愛人が一つ屋根の下、一緒に住んだら・・・?恐ろしいドラマが展開 ※ネタバレあり

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『五匹の子豚』は基本的に過去を辿る物語です。

現在進行形では派手な事件は起こりません。ひたすら、過去の事件を追憶する物語になり、ポアロは事件の日、現場にいた五匹の子豚+αと会話を繰り広げています。

そして、5人それぞれが見た過去を語っていくのですが、そこに主観というか、修正というか、ブレがあってそれが面白いのです。

が、5人内4人はカロリンが夫アミアスを殺害したことに間違いはない、と断言します。たった一人カロリンの無実を主張したのは妹のアンジェラだけ。

それだけあの時、あの屋敷には緊張感が漂っていた、と。

そりゃ、そうでしょうよ。

一つ屋根の屋敷の下に、妻と愛人、そして夫が一緒に生活をしていれば緊張感もマックスでしょうよ。が、わたしは本でそのあたりを感じ取れなかったのですが、ドラマで見るとその緊張感が半端なくストレートに描かれており、グサグサっと心に突き刺さりました。なんという悲劇だろう・・・!と。

若さ、美貌、お金、すべてを手にしている美しいエルサは才能あふれる画家アミアス(ゲームオブスローンズのベイリッシュ公を演じた人)を手に入れたい!と思い、一直線にアミアスの元に飛び込みます。アミアスもエルサを憎からず思い、彼女の肖像画を描くことに。

ま、それはいいのです。画家ですから肖像画を描くのはアリでしょう。が、何故、エルサを屋敷に連れ込むのだ・・・!妻と子どもがいる屋敷に愛人の女を連れ込む女の神経が信じられません。

そして、妻カロリンはそれをおとなしく黙ってみているような女ではありませんした。

表面上は平静を装いながらも、カロリンは夫のアミアスと衝突を繰り返し、家族や周囲の人物を巻き込んで緊張感が半端なく高まっていきます。

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衆目すべきはカロリン(妻)、エルサ(愛人)、家庭教師、フィリップがお茶を飲むシーン。

「この部屋はガラクタの山ね。わたしが引越ししてきたら全部ゴミに出さないと。カーテンは銅色と決めているの。夕日に映えそうでしょ?」

と唐突に告げるエルサ・・・!ヒーっと叫んでしまいましたことよ。

「分かっているでしょ、アミアスと結婚してここに住むの!」

それに対するカロリンの返事。

「思ったとおりね。あなた、どうかしているわ」

そこへ空気を読まない夫アミマスが登場。すかさず、妻カロリンが「エルサと結婚するそうね」と。何も答えないアミアス。

その時のフィリップの表情がわたしの心情を見事に語ってくれましたことよ・・・お気の毒、フィリップ。英国紳士たるものが女の争いに巻き込まれるとは・・・

この語、アミアスは殺され、カロリンが逮捕されます。

それから16年後、ポアロが出した答えは?

夫が愛して、頼りにしていたのは妻だった。そして、真の犯人はアミアスに愛されていないことを知ったエルサ。

「あの女が獄中で死んで良かったわ・・・!」

といったニュアンスのことを言いのけたエルサの図太さが恐ろしいです・・・エルサ役の女優さんもまたいい味を出しているのよー本当に美人だし。

それにしましても『五匹の子豚』は本当にいいドラマでした・・・!基本的には原作の方が好きになりがちなわたしですが、この作品は別。ドラマの方がスッキリと仕立てており、激情が分かりやすく楽しむことができました。

芸術のために妻と愛人を一緒に住まわせる・・・

現代人にはなかなか理解しがたい心境ですね。

アミアスが描いたエルサの肖像画に思いを巡らせる

「わたしが初めてこの絵を見たときに、これは大変な絵だということに気付くべきだったのです。これは被害者が加害者を描いた絵なのです・・・自分の愛人が死んでいくのを見つめている娘の絵なのです・・・」

とポアロに言わせしめた絵をちょっと見たかったのですが、ドラマでも出てきませんでした・・・残念!

また、別のシーンではこのように描かれています。

カナリヤ色のシャツと濃いブルーのズボンの若い娘が、太陽の光を全身にあびて、灰色の壁の上に腰かけている姿が、青い海を背景にして描かれていたのだ。

ドラマとは設定がやや異なりますね。ドラマではプールが背景でしたし、必ずしもカナリヤ色のシャツではありませんでした。

とはいえ、このエルサを演じた女優さんが本当に憎たらしい存在でうまく演じておられるなぁーと感心したものです。そして、何よりもお美しい。

是非とも、彼女を描いた絵を見せていただきたかったものですね・・・!

男一人、女二人、クリスティーお得意の三角関係を描いたミステリー

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クリスティーは恋愛をよくストーリーに組み込みました。

特に殺人が絡むパターンとしては男一人と女二人が多いですね。思いつく限り、紹介します。

クリスティーデビュー作『スタイルズ荘の怪事件』

広ーく考えますと、この作品には複数の三角関係が描かれております。

それらの三角関係が事件をあっちこっちへ振り向かせ、読者を混乱させるスタイルが既に確立されています。

処女作には作者のすべてがある、とよく言われますが、クリスティーのスタイルがいかんなく現れた作品ともいえますね。

美しい娘が現れた途端・・・『杉の棺』

そのものずばりの三角関係が描かれています。

「わたしはあの人と結婚して、この美つしい屋敷に住むはずだったのに・・・あの娘さえあらわれなかったら・・・!」

いずれは結婚すると思い描いていた相手の前に美しい娘が現れて、男はたちまち恋に落ちてしまう。が、美しい娘はわたしが作ったサンドイッチで毒殺されてしまった。違う、わたしは犯人じゃない!

というお話です。全体的に非常に抒情的な作品。

ゴージャスな舞台を背景に『青列車の秘密』

複数の三角関係が登場し、物語にワクワクを与えています。

思いがけない財産を相続した娘が親戚の屋敷を訪れるために豪華寝台特急、青列車に乗り込み、富豪の娘の殺人事件に巻き込まれることに。

青列車、リヴィエラ、宝石、と華やかさ満載のストーリーでお気に入りの作品です。

悪魔は誰か?『白昼の悪魔』

海辺のリゾートを楽しむ若い夫婦の前に現れた美しい女優(人妻)。

夫はたちまち、女優に夢中になり、妻は悲しみに暮れる。ホテルの滞在客は皆、その様子を興味深げに、あるいは不快に眺めていたが・・・女優の死体が発見され、事態は一点する。

クリスティーお得意のパターン。短編でも同じトリックがあります。

映画化もされた名作『ナイルに死す』

貧しい貴族の娘と婚約者の男、そして、富豪の娘。

富豪の娘はどうしてもその男が欲しくなった。そして、奪い取り、ナイル川へ新婚旅行に出かけたものの・・・

個人的クリスティー作品ベスト1です。近々、ケネス・ブラナーにより映画化もされますね。

>>『ナイルに死す』ネタバレ感想、男を愛している女と女に愛させている男、そして男が愛している女

この他、『三幕の殺人』や『メソポタミアの殺人』、『ゼロ時間へ』、『邪悪の家』なども三角関係に当てはまるかもしれませんね。

クリスティーは恋愛小説家としての顔もありましたので、多くの作品にロマンスが登場します。

わたしにとって、ミステリーの展開と共にそれらの恋愛の展開も非常に興味深いものでした・・・!

暑い日が続きますが、是非、お茶とケーキを片手にクリスティーの世界へようこそ!

>>BBC制作のドラマ ポワロシリーズ

>>アガサ・クリスティー著 ポワロシリーズ

ワタノユキ

マイペースに生きる主婦 & 在宅ワークの日々(since20141003)。理想と現実の狭間を永遠に彷徨い中。 詳細なプロフィールはこちらにて。 わたしらしく年齢を重ねる 大人の塗り絵ライフ もよろしく♡

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